外資系企業の「エスカレーション」ってどういうこと? 前半
こんにちは、外資系部品メーカで営業をしている、ゆきひこです。
ビジネスの場面で「エスカレーション」という言葉を聞いたことがありますか?
外資系ではよく使われる言葉なので説明したいと思います。
エスカレーションとは
Wikipediaには以下のように記載されています。
「エスカレーションとは、上位者、上席者の指示を仰ぐこと。
また、マーケティング用語、特にコールセンター用語で、顧客対応においてオペレーター自身だけで対応が困難な場合、上位の管理者やスーパーバイザーなどに交代して対応してもらうこと。」
担当レベルでは手に負えない、もしくは重要な案件なので上司レベルの判断を求めるという意味で使われる言葉ということですね。エスカレータをイメージしてもらうとわかりやすいと思うのですが、会社のヒエラルキーの下から上に階層を上がっていくイメージになります。
日本企業に勤めている方はあまり聞かないかもしれませんが、外資系企業と関わることがある方は良く聞く言葉と思います。レストランで不満があった時に「責任者を出せ!」というのがありますが、これも顧客からのエスカレーションですね。
エスカレーションは誰でもできるので社内の営業から本社に対してもありますし、お客様から自身の会社の対応についてエスカレーションされることもあります。
例を挙げた方がわかりやすいと思うので、以下に具体例を示します。
1.価格承認のエスカレーション
前提として、外資系の本社が日本にない企業を想定します。一般的に外資系の企業では価格の決定権は本社にある事が多いです。例えばこんな感じです。
「現在承認されている価格では競合に負けてしまう。もっと競争力のある価格を取らないと勝てないので本社の製品部の上層部にエスカレーションしよう。」
というケースがあります。
外資系では、承認できる価格のレベルが本社のプライシングチームの中でも、担当レベルとマネージャレベルで違っています(マネージャの方が安い価格を承認できる)。担当レベルの承認で出せる価格でビジネスが取れれば良いのですが、大手の重要顧客では競合メーカも多いので、競争力のある(安い)価格を提示する必要があります。その時にはプライシングの上のマネージャレベル、もしくは製品部のマネージャレベルにエスカレーションをします。
この際には、ビジネス背景とこの価格を出すことで得られるビジネス規模についての説明を行う必要があります。当然ながら英語ですが、メールでも十分なケースが多いと思います。
成功すれば、競争力のある価格が承認されるので競合と戦ってビジネスが獲得できることになります。そうなれば承認した製品部も喜びますし、新規ビジネスが取れることは良い結果になります。
しかし、非常に低い価格を承認してもらったのに、ビジネスが取れなかった場合は信用を失うことになりますので、お客様のコミットが重要になります。プライシングについては別の機会で。
2.品質や供給問題でのエスカレーション
もう一つのエスカレーションの例です。
先ほどの例は新規のビジネスを取るための前向きな行動でしたが、ビジネスを行っている以上、後ろ向きな問題もたくさんあります。
お客様にて重要不具合が起きてしまった場合、また供給が間に合わずお客様の生産ラインを止めてしまう可能性があるようなケースの場合、エスカレーションを行うことになります。
重要度にもよりますが、最悪のケースではお客様から直接自社の上層部にプレッシャーがかかることがあります。つまり、日本支社の上層部がお客様からエスカレーションを受けることになります。ということで、以下のようになります。
「今回の品質問題が客先の役員レベルまで上がっている。この案件は非常事態なのでうちの本社の役員レベルにエスカレーションをあげよう。」
という使い方です。
外資系部品メーカと取引のある方であれば、外資系の営業担当が、
「この問題は持ち帰って本社にエスカレーションします」
と言っているを聞いたことがある人もいるかもしれません。
これを聞いて、?となる人もいるかもしれませんが、これは正しいアクションになります。
外資系では日本支社はあくまでローカルなので、本社は別の国にあります。そして製品部が本社管轄である限りは日本で決定できる権限は小さいものです。
大きな問題に対して対応できる権限は本社にあるのです。よって、この大きな問題に対してどれだけのリソースをかけて本気で対応するかは本社の人が決めることになります(残念ながら)。
その人たちは日本の外にいるわけで直接の声が届くことは少なく、日本支社の人がお客様の声を聞いてそれを本社に届けるわけです。
3.ビジネスを伸ばすための投資のエスカレーション
今度はまた少し違ったエスカレーションです。技術は日々向上しており、お客様の要求も変化が激しいため、その要求に応えるには投資をしてどれだけ変化の激しい要求に応えられるかが重要になっています。
その際に新しい設備を入れたり、新しい分野の人間を雇う必要が出てきたりする場合があります。この場合は会社としての投資を検討することになるので、本社の上層部に要求することが必要になります。
今後ビジネスを取るためには工場のキャパが必要とか、こういう設備があればこれだけお客様が使ってくれる可能性があるから設備を導入してくれとか、そのような内容です。
ローカルの日本支社からもどんどんお客様の声を上げていく必要があります。これが外資系日本支社の重要な役割でもあります。重要なのはインプットをし続けていくこと、会社としてやるかやらないかの判断は本社側でするにしても日本支社の使命としては日本市場のお客様の声を正確に伝え、お客様の満足する製品を提供することです。
以上が外資系に特有のエスカレーションという言葉の具体的な使用例についての説明でした。
次は、エスカレーションをする際に気をつけるべき3つのことを説明します。
ゆきひこ